知見・事例
伊藤忠商事におけるCSR推進活動(5/5)
8.今後の活動について
山口:では最後に、これからの夢や計画をお聞かせください。
中山氏:当室でそこまでやるべきかどうか分からないのですが、予算を持って営業部のCSR的な事業の側面支援をするという取り組みです。実際に営業部からのワークショップのフォームなどにはそういった要望が書いてあります。
桜本氏:多分、当社の総本社の仕組みとして難しいと思うんです。でも営業が職能(管理部門)に期待しているのはそういうことなんです。CSR推進室に対しても、「言うだけで・・・」と思っているんじゃないかと思います。
やれというなら何か助けてよ、と言われ続けても、「現場で、本業で何ができるかをまず考えていただくことをお願いします」と答えてきたんですけれども、本当にそれでいいのか。当室で、投資にあたりCSRを考慮するために、投資チェックリストを作ったのですが、これはあくまでチェックをする仕組みということで、投資基準ではありません。例えば担当者がCSR側面からESG(Environment、Society&Governanceの略。環境、社会、ガバナンス面での配慮)に配慮したビジネスをやろうとしても、リターンが少ない、あるいは回収が遅くなるなど、社内の投資基準をクリアできないために社内でOKがもらえないんですね。こういう場合に、担当者から、こういう理由でCSRの観点から評価できる活動なので10年間赤字が続いてもいい、というような「ルールの緩和」を求められることがあるんです。これに対応できる、「CSRゆるゆる枠」というのがあると嬉しいわけですね。本当にそれをやるべきだと強く思っている担当者を助けたいという気持ちは常にあります。
山口:今のお話しはものすごく示唆的だと感じました。CSRの本質的な推進のためには、やはり人事評価制度などの経営基盤まで分け入る必要があります。それをCSR室がやるべきかどうかは別ですけれども、これまで短期視点でやってきたビジネスそのものの評価をいくつか特別枠を設けて、長期的に評価すべきでしょう。それらの部分に関しては、CSR室が面倒を見ますと、そういうことができれば面白いでしょうね。
桜本氏:専門家の方でもそういうことをおっしゃる方が多いですね。人事評価制度に何らかのかたちで組み込まれていないと実効性があるとは言えないと。
高井氏:一種の社内検定というか、資格みたいなものをやってみるというのはどうかと思います。そこで知識を得よう、その中に自分を置こうというモチベーションですよね。そのために教育ばかりでなくて、社内資格的なものをやってもいいのかなと思いました。資格を持った人は、現場でも自負ができるかもしれないという期待を込めて。
桜本氏:評価や報酬につながるとみんな頑張ると思います。あるいはCSR的なビジネスを立ち上げて、それで成功した人やCSRを競争力にするという意識を持ってくれる人が増えるといいと思うので、やはり社内浸透、社内教育というのはもう少しやってもいいのかなと。世の中が変わってきましたから、それが競争力になるようなモデルを作る社員が出てくるんではないかと期待しています。
山口:本日は、CSRの立上げから今後の取り組みまで、伊藤忠商事様のCSRのエッセンスを拝聴いたしました。本当にありがとうございました。
伊藤忠商事株式会社 会社概要
会社名 | 伊藤忠商事株式会社 |
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創業 | 1858年 |
設立 | 1949年12月1日 |
代表者 | 代表取締役社長 小林 栄三 |
東京本社 | 〒107-8077 東京都港区北青山2丁目5番1号 TEL:03-3497-2121 |
大阪本社 | 〒541-8577 大阪市中央区久太郎町4丁目1番3号 TEL:06-6241-2121 |
営業所数 | 国内15店 海外138店 |
資本金 | 202,241百万円 |
売上高 | 120,651億円(2008年度) |
従業員数 | 4,310人 |
ホームページ | http://www.itochu.co.jp/ |
CSRサイト | http://www.itochu.co.jp/ja/csr/ |