知見・事例
メタルワン 社員手作りの企業理念(3/3)
3.企業理念制定後の効果と浸透
山口:こうしてお話をうかがっていると、理念に入れるべき概念や社員の方々の想い、言葉の吟味、いろいろなご判断があったことがよくわかりました。
では次に、理念の社内浸透と効果の話題に移ります。企業理念は2007年1月に発表されましたが、社内浸透の具合はいかがでしょうか。
逆井氏:金田前社長の1つの貢献なのですが、どんな場所でもまずこの3つの柱を嫌というほど社員に語りかけていました。入社式の話でも、いろいろな拠点回りでも。こういう活動を通して、徐々にみんなに普及してきて、言葉が普通にみんなに染み込むようになってきているなと感じています。
原氏:ある会議で、メタルワンが求める人材像とは、と聞いたら、ほとんどの社員が企業理念を具現化する人材だ、と答えていました。これは企業理念がひとつ浸透し始めたひとつの証なのかなと思います。
逆井氏:そうですね。3ヵ年の人材計画を考える「人材育成タスクフォース」でも、みんな同じことを言っていました。「地球市民」とはどういうことなんだ、「正々堂々」というのはどんな人材なんだ、という具合でした。
山口:すばらしいですね。
逆井氏:採用の際にも、「われわれの企業理念の1つである高志創造は、あなたにとってメタルワンでどのようなことをすることですか」と投げかけています。
長井氏:私は、毎年新人研修で、企業理念を語っているんですが、なぜ企業理念ができたかを説明し、企業理念を見て「皆さん、どう感じますか」ということを投げかけたりしまして、反応がなかなか面白いんです。
山口:メタルワン本体では相当浸透しているように感じますが、一方で、御社は資本関係のあるグループ会社が非常に多いですよね。グループ会社への浸透に関してはいかがですか。
長井氏:グループ企業の中には創業者の創業精神があったりして、皆さん良いことをおっしゃっています。メタルワンからは、それらに替えてこの企業理念を掲げなさい、という要請は一切していません。それぞれの企業独自の理念は大切にしてくださいとお願いしています。
原氏:グループ会社はいろいろありますが、おっしゃるように押し付けるようなことは一切していないんです。でも、結構、企業理念の入った額を飾っていただいています。
金澤氏:メタルワンの企業理念は、それぞれの関係会社の理念や想いと、矛盾したり立ち入ってしまうことにならないように配慮して作りました。この3つの柱であれば両立しうるだろうと考えたところはありますね。
4.企業理念とCSR
山口:それでは最後に、御社の企業理念とCSRの相関関係をどのように捉えられているかをお伺いしたいと思います。
御社は、この企業理念を実行することがわが社のCSRだ、と明確にしておられており、かつこの理念は非常にCSR的であると私どもは捉えています。
金澤氏:かっこうよく言いますと、企業理念が一番上位概念にあって、果たす会社の機能や役割は、ビジョンである「Metal Market Maker」と、ミッションである「Metal Value Optimizer」で示し、これを実行していくんです。
企業理念とビジョンとミッションによって、わが社は社会的に存在価値を認められる会社になるんです。これイコール、CSRでいうところの本業における社会的な存在価値です、ということをそのまま言っていると思います。それ以上の説明はいらないということです。
CSR概念図
山口:簡潔明瞭。
金澤氏:どこそこに木を植えましたと、いうような本業外の社会貢献は非常にいいことではあるんですけれども、企業理念とCSRの観点からは、いの一番に取り組むことではないように思っています。
本業でまず何をするのか、ということを中心に置いていくのが重要だと思いますが、まだなかなか皆さんには理解されていなくて…(笑)。
長井氏:こうやって、あらためて理念を眺めると、「世界の人々と共に生き、働き、広く社会のために活動をします」というのは、まさにCSRだと思うし、それをフェアプレイで「正々堂々とやっていきましょう」ということです。この言葉でもって、みんなが行動していければと思います。
山口:今日は、会社とは何か、という核心部分に触れるお話をお伺いしたように感じます。皆さま、ありがとうございました。