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シスメックス 迷いなく理念を実践する企業(3/4)

山口:貴社理念のお話を伺いたいと思います。
シスメックスウェイと言う名前の企業理念ですが、冒頭に、使命「ヘルスケアの進化をデザインする。」とあります。

井口氏:シスメックスウェイは2007年4月に制定しました。それ以前は、創業以来「三つの安心」という企業理念がありました。
「お客さま」「取引先」「従業員」という三者に安心を届けるという考え方です。今の時代、シスメックスを取り巻く環境は創業時とは大きく変わりました。ステークホルダーも多様化し、社会に対する責任も増えてきています。これからもステークホルダーの皆様から信頼いただくためにはどうあるべきかを改めて問い直し、「三つの安心」をベースとした新たな企業理念「シスメックスウェイ」を制定しました。

山口:目の前のステークホルダーに「安心」を提供するだけでは十分でないと。

井口氏:医療に携わる研究開発型企業として、現代の人々に加え未来の人々のためにもシスメックスはやらなければならないことがある、必要なのは未来に続く姿勢だと考えて「進化」という概念をミッションの基本に置きました。これは私個人の解釈ですが。

山口:我々は未来のヘルスケア分野をリードしていく、という決意なのですね。
話が急に広がりますが、近年のCSRの重要なキーワードは「長期」だと思います。
これまでの経済や社会運営はその評価や計画が短期的でありすぎた。
サステナビリティ実現のためには長期展望と息の長い計画が必要だけれども、短期観点では、長期的な構想を具体化することができない、長期的な見方や評価方法が必要だ、と皆が考え始めているように思います。
ヘルスケアには、技術的な面もあれば、社会課題解決のために世界の人々とどのように関わるか、という社会的な面、規制や制度の面など色々な面があると思います。
それら全体について長期構想を進めていかれたらすばらしいですね。

井口氏:企業理念を再定義した後、家次社長は、全社員がこの目標を共有することが最も大切だと考え、世界のグループ拠点をくまなく廻り、シスメックスウェイについて全ての社員と語り合いました。その議論の中で、特に日頃、社長と接する機会の少ない海外拠点の社員がこれを正面から受け止め、熱く反応したという話を聞きました。これは私にとっても予想を超えたことでした。シスメックスウェイの制定にこれほどインパクトがあるとは。

山口:シスメックスウェイをどのように実践するかを世界の社員が議論し、考え、提言するバリュークエスト(VQ)セッションを一年間行なったと聞きました。

井口氏:社長が世界を歩いて社員に語りかけ、問いかけたことへの社員からの返事がこのセッションでした。「企業理念を実践するためにあなたは何をしますか」。まさに、CSRの実践を社員一人ひとりが考え続けたセッションでした。

山口:明快な理念を作り、理念に魂を入れるための努力をし、社員全員でその理念を共有して、検体検査事業で理念を具体化する、という構造がよくわかりました。
シンプルで清々しく感じます。

企業理念・行動基準(CSRレポート2009、P7-8)クリックでPDFが開きます。
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