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知見・事例

JSR 着実に進化を遂げるCSR(2/2)

2.社内浸透の方法

山口:先日、さまざまな社員の方々のご意見に接した折に、多くの方々が自社の社会的な役割というような、言ってみれば必須業務でないことについてそれぞれ考えを持っておられるのを知り、貴社の良き社風に感動しました。

社員の方へのCSRの浸透で工夫されていることはありますか。

久保氏:会社のCSRに対する考えを社員に伝えるにはCSRレポートを有効利用するのが一番だと思います。

レポートを活用するために、内容をコンパクトにし、社員や一般の方に読みたいと思ってもらえるレポートができたことが大きいと考えています。そして、グループの社員全体にそのレポートを配布し、「アンケート」と「読む会」を行いました。

「アンケート」は合計約2,600名から回答を集め、「読む会」は約350部門で開催してもらいました。

山口:350部門とはまた…。

久保氏:レポートがCSR活動推進の起爆剤になっていることは間違いありません。それから、「アンケート」や「読む会」を行ったら、その結果を必ず社員にフィードバックするようにしています。その時も、なるべく簡潔な文章にまとめて、分かってもらえるように心がけています。

社内浸透の工夫の2つ目は、トップからCSRに関する自分の考えを発信してもらうことです。例えば、社内のイントラネット上では、社長が自らメッセージを随時発信しています。最近では、環境や社会課題解決を事業化していくんだということを書いています。

また、先ほど申し上げた「アンケート」や「読む会」の社員へのフィードバックの際にも、担当役員からのメッセージを添えて発信するようにしています。

黒田氏:広報部門と密接に連携しながら取り組んでいるのも工夫の一つです。3ヶ月に1回発行される社内報にも「CSRの窓」というコーナーを設けて、社員に伝えたい重要なCSRに関する情報を紹介しています。

山口:CSR部署が独走する会社は社内がついてこず、逆に社内をあまり気遣うCSR部署ではCSRが進まずというのがCSRのご担当者さまが頭を悩ませる所です。

JSRのCSRが良いのは、このバランスを上手く保たれている点ではないでしょうか。

久保氏:「対話会」と呼んでいるのですが、年に1回は工場や各部門の現場に行って、現場の方々の生の声を聞きます。先ほどお話した「読む会」などを話題にして。

黒田氏:JSRは昔から現場主義なんです。

まだ子会社などを含めると全部を廻れているわけではないので、これからの課題でもあります。

久保氏
久保氏

3.今後の課題と目指す最終ゴール

山口:今後の課題をお聞かせください。

久保氏:今年からCSR調達の取り組みに向けて、仕入先に対して簡単なアンケートを始めました。海外も含めた1次仕入先の内の9割近くを対象としています。これもA4・2枚に内容を絞り、回答しやすいものにするように心がけました。今後の課題としては、アンケート結果を踏まえた対応を、原料調達部と連携して検討していきます。

山口:サプライチェーン・マネジメントにCSRを加えることに、原料調達部の方の理解は得られましたか。

黒田氏:初めは少し抵抗もあったようですが、きちんと説明をしましたら、理解してくれました。仕入先から、CSRについて理解を深めたいというニーズが出てきているという背景もあると思います。昨年は、ある仕入先さんからご依頼を受けて、CSRについての説明会を設けさせていただいたこともありました。

山口:生物多様性に着目されて、何かをしようとしているように拝見しています。

久保氏:まず、来年度までを目処に生物多様性に関する方針の策定を予定しています。それから、社員の生物多様性に関する問題意識を高めるためにも、工場などにおける生物多様性への配慮も強化していきたいと思っています。

山口:相対的に見て、JSRは自然環境との関わりは小さいのではないでしょうか。御社の場合は調達先の配慮が重要になってきそうですね。

久保氏:そうなんです。ただ、JSRは石油由来の原材料がほとんどなので、調達先の生物多様性への配慮を具体的にどのようにやっていけばよいのか難しいですね。

超長期的な視点で言えば、代替資源の開発といった話しに繋がるのかもしれません。

山口:さすが久保さんだと思いました(笑)。

最後に、目指されている最終的なCSRのゴールを教えてください。

久保氏:最終的には、CSRを特別に意識しなくても、日常の経営活動の中でCSR的な取り組みが自然にできているという状態が理想だと思っています。そのためにも、最も重要だと思うのが社員の意識の向上です。今は、社員の意識をじわじわと醸成する時だと思います。

黒田氏:事業計画や人事評価の中にも、自然とCSRの観点も入っているようになりたいですね。

山口:今日は御社のCSRの取り組みについて率直にお聞かせいただけて、大変嬉しく感じております。長時間お付き合いくださいまして誠にありがとうございました。

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