知見・事例
「"攻め"のステークホルダー・エンゲージメント」を組織的に追求する企業(2/2)
3.組織をあげたイノベーションの創造
エーザイでは、こうした患者との対話を通じたイノベーションを創出するため、いろいろな組織・プロセス上の仕掛けを行っている。
まずは、hhc活動を推進する専門組織として「知創部」を設立。設立にあたっては、「知識創造理論」の野中郁次郎一橋大学大学院名誉教授に協力を仰ぎ、同教授の提唱する理論を実践する知識創造活動のサイクルを創り出すこととした。
まずは、現場に赴いた社員が、患者やご家族と過ごすことを通じてぼんやりした課題を感じ取る。それを会社に持ち帰って組織内で議論し、課題を普遍化する。その課題に対して、他の部署も巻き込みながら対応策を磨き上げて、一人ひとりが現場で実践する。そうしたプロセスを確立している。
また、こうしたプロセスを効果的に機能させるため、hhc活動の成果を人事評価に反映する、現在の活動および過去の優れた事例などをイントラネットで共有する、有望な取り組みを表彰する、サーベイで知識創造理論の浸透度を確認する、など、いろいろな工夫をしている。
エーザイの知識創造活動
4."攻め"のステークホルダー・エンゲージメントの可能性
hhc活動で患者と直接対話し、その苦労や悩みに接することは、患者への共感を生み出し、社員のモチベーション向上にもつながる。
エーザイでは、さらに、地域住民が認知症を理解しており、早期診断・治療が可能で、地域が患者に優しい、認知症になっても安心して暮らせるまちづくりにも乗り出している。こうした活動を医師や地域の方々との対話を通じて実施することにより、エーザイあるいはアリセプトに対するファンを増やしている。これもまた"攻め"のステークホルダー・エンゲージメントである。
こうしたステークホルダーを味方につけ、ステークホルダーとの関係を強みに変える経営は、長期的に企業価値を向上させていくだろう。
- 出典:エーザイ知創部高山千弘部長インタビュー、日経ビジネスマネジメントsummer2009など各種二次情報
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