知見・事例
インテルのサプライチェーン・マネジメント(2/2)
2.インテルのサプライチェーン・マネジメント
山口:佐倉さんは、本来は半導体製造装置の技術者でおられるのに、CSRのSCMも担当されています。どういう仕組みですか。
佐倉氏:私のもともとの担当部分が装置の安全や環境配慮だったので、その範囲が広がってCSR全体になりました(笑)。
山口:それは大層拡がりました(笑)
佐倉氏:サプライチェーン・マネジメントのおおもとは米国のIntel本社に調達部があって、そこが全体を見ています。私はその下で日本のサプライチェーン・マネジメントをやっている、という体制です。
EICCに関しては、最初は中国にある自社の後工程工場などから始めて、勝手がわかって来たところで、段々サプライヤーに広げていきました。
山口:大きな課題、例えば紛争鉱物などは。
佐倉氏:上の調達部が担当しています。調達部のスタッフがコンゴに行って、地域の方々と対話し、調査したことをサプライヤー向けのウエブサイトに載せています。
山口:二次サプライヤーのマネジメントはいかがでしょう。
黒田氏:一次サプライヤーから紹介されて、二次サプライヤーに行く、というのは知的財産の保護などの面でやはり難しいのです。
インテルから、一次サプライヤー、一次サプライヤーから二次に、と気長に拡げていくということだと思います。
山口:佐倉さんはどんなふうにサプライヤーとやりとりされているのですか。
佐倉氏:CSRに馴染んでいる会社は話が早いですが、小規模な会社だと、なぜこんなことが必要なんだ!という反応がまずあります(笑)
まずよく説明して、対話して、そのあと、具体的なことに入っていきます。こういうことは時間が掛るし、よく相手の話を聞くことが大事ですね。
山口:インテルのサプライチェーン・マネジメントは丹念だということをよく聞きます。
質問表で点数をつけて、合格したら取引きして、落第したら取引を止めるというのではないと聞きます。
佐倉氏:この技術はその会社だけにしか無い、という会社ばかりなんです。そことはずっと付き合いたい、だから面倒を見る、というのがインテルの考え方だと思います。
山口:付き合うに当たっては、QCD(Quality, Cost, Delivery:ものづくりの基礎となる品質、コスト、納期のこと)だけではなくて、CSRも全部、というのがインテル発の考えで、それがEICCとなって世界に広がったのではないでしょうか。
佐倉氏:そうですね(笑)
取引の最初に「品質審査」をしますが、ここで言う品質とは、技術だけではなくて、経営、CSRが全部入った総合的な品質です。そのやりとりの時にEICCの質問表が出てきて。
山口:びっくりする(笑)
佐倉氏:サプライヤーとおつきあいしていると、やはり対話が一番大事だと思います。
対話していって、課題があればそれを一緒になって良くしていくと全体が良くなるというのがインテルの考えだと思います。
山口:インテルのその熱心さに腰が引けるサプライヤーもおられませんか。
佐倉氏:はい。特に最初にお付き合いするサプライヤーはほとんどがそうですよ。
山口:そういう時にはどんな話をされるのですか?
佐倉氏:よく言われるのが「インテルの要求レベルは高い」と。でも逆に「うちの要求をクリアすれば、他でも十分通用しますよ」ということを、時間をかけて説明しています。
山口:インテルのその哲学がEICCの仕組みにも投影されているにちがいないと、今感じました。
今日は本当にありがとうございました。
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