知見・事例
ユニ・チャームの本業を通じたCSR(2/2)
超高齢社会に必要な排泄ケア
排泄ケアは、食事、入浴とならぶ三大介護のひとつで、自立して排泄できるかどうかは人間の尊厳に関わるデリケートな問題です。ユニ・チャームは、適切な排泄ケアを行うことで、寝たきりを防ぎ、人々の健康寿命を延ばすことを目的に、世界初の高齢者用「ライフリーリハビリパンツ」を1995年に発売、改良を重ねてきました。また、製品の提供と併せて、介護施設に専門のプロケア営業員とケアアドバイザーを派遣し、正しい商品知識の啓発や排泄ケアの改善を介護施設のスタッフと一緒に行っていくライフリーケア活動を実施しています。
介護の現場に入ることで、そこで起きている課題を発見、解決策を検討し、改善につなげる。そのプロセスを当たり前のように繰り返す。介護される側だけでなく、介護者の負担も減らすことで、気持ちよく介護できる環境をつくる。夜間のおむつ交換の負担を軽減するために開発された尿吸引ロボット「ヒューマニー」はそのように開発された製品の一つです。ともに開発に携わった介護の専門家もこの製品に「最初は懐疑的だった」と。しかし実際に介護を受けている方が使ってみると、介護する方・される方ともによく眠れるようになったと言います。
21世紀における新たな排泄ケア」モデルを創造することをユニ・チャームは自分たちの使命としています。髙橋氏は「排泄ケアを深め、充実させながら世界に広げていきたい」と語ります。
グローバルな社会課題への挑戦
ユニ・チャームの海外展開は1984年に台湾に現地法人を設立し、生理用品と紙おむつの生産販売を開始したことに始まります。「困っている人がいるところは国内も海外も区別なく事業を通じて貢献する、それがユニ・チャームの基本姿勢です」と髙橋氏。現在では、東アジア・東南アジア・オセアニア・中東諸国、北アフリカなど世界80カ国以上で紙オムツや生理用品などを提供しています。
こうした中、ユニ・チャームは2006年に国連「グローバル・コンパクト」への支持を表明、また、国連ミレニアム開発目標の考え方に賛同し、その実践に努めています。かつて日本において女性の社会進出を支援してきた取り組みを、さらに進化したかたちで国際社会において推進しようとしているのです。
台湾、韓国、タイ、中国、インドネシア、インド、サウジアラビア、エジプトなどにはそれぞれ生産および販売の拠点を展開し、商品提供による女性の束縛からの解放を進めると同時に、地域における雇用を生みだすことで女性の社会進出を後押ししてきました。また、2012年5月には、サウジアラビアで女性だけによる工場での生産活動を開始するなど、地域の事情に合わせたきめ細やかな取り組みを進めています。
2012年10月には、このような取り組みが高く評価され、国連開発計画(UNDP)が主導する商業的な成功と持続可能な開発を同時に追求する「ビジネス行動要請(BCtA:Business Call to Action)」の活動として承認されました。髙橋氏は「こうした外からの評価は社員全体の士気を高めることにつながっています」と言います。ユニ・チャームへの国際社会からの期待が高まってきているのです。
企業理念「NOLA&DOLA」の実現=ユニ・チャームのCSR
企業が成長しグローバルプレーヤーになるにつれて、その企業への期待や要求は高まっていくことが予想されます。ユニ・チャームの場合も例外ではないでしょう。例えば消費財メーカーであるユニ・チャームには、事業プロセスにおける環境配慮やCSR調達が今後より求められるようになると思われます。
ユニ・チャームは、企業理念「NOLA&DOLA」の実現がユニ・チャームのCSRと宣言しています。そこには、創業より今日まで継承してきたDNAと、ステークホルダーからの高まる期待とを事業活動の中で統合していく決意が込められているものと思われます。ユニ・チャームのCSR活動の発展にこれからも大いに期待したいと思います。
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