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シチズンのCSVウォッチ"CITIZEN L Ambiluna"誕生ストーリー(2/2)

社外とのコラボレーション

こうした商品の「内面の美しさ」の追求と並行して、CTIZEN Lの外側=デザインの美しさの追求も進められました。これについても、エシカルウォッチというコンセプトであることから、山田さんを通じてCSR関係の伝手で、エシカルファッションの普及を進めるファッションジャーナリストの生駒芳子さんを紹介して頂き、生駒さんから従来のファッションとは違う視点での特別なデザインが出来る人として、建築家の藤本壮介さんを紹介していただきました。生駒さん、藤本さんも、エシカルウォッチというコンセプトに共感して、協力して頂けることになりました。

藤本さんからは、2014年末に、「時間は見えないものだが感じることができる。光も形はもたないが、その揺らぎに時を感じることができる。光の揺らぎを形にして時を感じられるような時計にしたい」とのアイデアが出されました。シチズンの技術の人たちも、最初は聞いたこともないデザインコンセプトに戸惑いがあったかもしれませんが、藤本さんのアイデアに技術者としての誇りを刺激され、3回のプロトタイプを経て、CITIZEN L Ambilunaのデザインが創り上げられました。なお、生駒さんの紹介で、西陣織の細尾、漆の坂本乙造商店などの協力を得て、日本の伝統文化の要素も織り込んでいます。

左から山田さん、櫻井さん、福嶋さん
左から山田さん、櫻井さん、福嶋さん

CSVの社内浸透

こうして商品の外面と内面両方の美しさを追求する一方で、社内的には、特に商品の内側の美しさ、製品成分表公開、ライフサイクルでのCO2排出量公開、紛争鉱物フリーといったものに対する理解を得る必要がありました。そこでCSR担当の山田さんは、社内で商品を通じた社会課題への対応=CSVという考え方を広げるべく、CSVの専門家(クレアン水上)に、社内向けCSVセミナーの実施を依頼しました。CSVセミナーでは、一般的なCSV概論に加え、シチズンおよび競合等のCSV事例を共有し、シチズンで今後どのようなCSVを実施すべきかについてのグループディスカッションを行い、具体的なイメージを持ってCSVを浸透しました。

CSVの考え方を浸透させることにより、エシカルウオォッチのコンセプトが分からないという第1ハードルをクリアし、また、環境マネジメント室がすでに構築していたシステムを活用し生産側の負担を軽減することにより、実現への取り組みの大変さという第2のハードルをクリアしました。そして、2016年3月17日に、CITIZEN L Ambilunaは、世界最大の宝飾と時計の見本市バーゼルワールドで発表されました。

CSVが紡いだ社内外のコラボレーション

社内での商品企画、CSR、環境のコラボレーション、社外の生駒さん、藤本さんらとのコラボレーションが、CITIZEN L Ambiluna誕生の最大のカギであったと思います。そしてそれを紡いだのが、商品を通じて社会課題に対応するCSVというコンセプトです。CITIZEN L Ambilunaの成功が、「市民に愛され市民に貢献する」企業であるシチズンのCSVのさらなる推進につながり、それが多くの企業でのCSV推進につながることを期待します。

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