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オンラインセミナー「サステナブル・サプライチェーンマネジメントの全体像を学ぶ」

サプライチェーンマネジメントチーム
(株式会社クレアン)

新型コロナウイルス感染拡大は、グローバルに広がるサプライチェーンに潜んでいたリスクを顕在化させ、レジリエントなサプライチェーンの構築が一層求められるようになっています。このような状況の中、サステナビリティの視点からはどのようにサプライチェーンマネジメントを進めていけばよいのでしょうか。

本稿では、今企業に求められている「サステナブル・サプライチェーンマネジメント」の背景や全体像、取り組みの流れを紹介します。

  • ※本稿は、2020年8月5日に開催された弊社オンラインセミナー「サステナブル・サプライチェーンマネジメントの全体像を学ぶ」の概要まとめになります。

サステナブル・サプライチェーンマネジメントが必要な背景

サステナブル・サプライチェーンマネジメントが求められる最大の背景は、近年の深刻な人権・労働問題や環境破壊の多くが、企業活動、特に大企業にとってのサプライチェーンの中で起きているためです。この事態を受け、さまざまなステークホルダーから企業に対応を求める要請が強まっています。

サステナブル・サプライチェーンマネジメントイメージ図

サプライチェーン上の課題に関しては、東南アジア・オセアニアの熱帯林における違法伐採や、中央アフリカの紛争鉱物などが有名ですが、日本国内でも外国人技能実習制度に関する課題がNGOから指摘されており、世界中のさまざまな現場でNGOによる調査やキャンペーンが行われています。

国際社会もこの流れを後押ししており、国連人権理事会における「ビジネスと人権に関する指導原則」採択を皮切りにさまざまな国際的ソフトローが形成され、「英国現代奴隷法」や「オーストラリア現代奴隷法」などの法制化を進める国も出てきています。

その結果、サプライチェーン上の社会課題の顕在化は、企業にとっての経営リスク要因と捉えられ、投資家が企業評価/エンゲージメント/投資判断をする際に重要視するようになってきました。

上記のNGOによるキャンペーンや各種政策、投資家評価は、最終製品メーカーを対象に行われることが多く、そこからサプライチェーン上流の企業への取り組み要請につながる事例も増えてきています。また、1社だけで対応するには規模が大きい社会課題も多く、業界全体で協議しながら取り組みを進めるケースも増えています。(電子電機業界におけるRBA や建設・不動産業界 など)

例:製造業のサプライチェーン

新型コロナウイルスとサプライチェーンマネジメント

新型コロナウイルス感染拡大は、サプライチェーン上のリスクを一層顕在化/深刻化させました。
OECDやFair Labor Associationなど、さまざまな機関・団体が、サプライヤーおよびサプライチェーンマネジメントに関するレポートや推奨事項を公表しているので、参考にしてください。

企業側としては、上記のような最新情報を確認した上で、ステークホルダーごとのリスクや影響緩和手段を分析・整理することが必要です。

サステナブル・サプライチェーンマネジメントの流れ

サステナブル・サプライチェーンマネジメントは、社内浸透(理解)と推進体制を基盤に、「方針・規範類の策定>リスクの把握>現地確認・評価>是正・モニタリング」を基本的な流れとしています。

サステナブル・サプライチェーンマネジメントの流れイメージ図

各フェーズの特徴や留意点をまとめると、以下のようになります。

社内浸透
  • 自社が取り組む意義や経営上の位置づけを整理し、関係者に共有する。
  • その際、社内関係者ごとの調達に対する関心事項を把握し、理解を得ることが重要。
推進体制の構築
  • 大きくは「タスクフォース型(委員会やワーキンググループの設置)」か「部門集約型(特定部門への集約)」に分かれる
  • 既存の調達活動(意思決定プロセス、関係部署、調達基準など)に鑑みて、体制を構築する。
方針・規範類の策定
  • 調達方針(CSR調達方針)を設定の上、具体的なサプライヤー行動基準(CSR調達ガイドライン)に落とし込む。
  • その際は、自社が対応すべき「サプライチェーン上の社会課題」と顧客企業などの「ステークホルダー要請」に留意する。
  • また、上記網羅的な方針を定めつつ、業態に応じて、深刻な課題(人権、原材料関連など)については個別方針を策定する。
リスクの把握
  • 限られたリソースの中で効果的に取り組みを推進するため、複数の観点でスクリーニングをかけ、積極的にコミュニケーションが必要なサプライヤーの優先順位をつける。
  • 絞り込みポイントは「仕入金額/量」「重要部品かどうか」「代替不可能部品かどうか」といった経済的観点や、カントリーリスクや業種別リスクで見ることが多い。
現地確認・評価
  • 監査には大きく第二者監査と第三者監査の2種類があり、目的や監査対象、社内リソースに応じて使い分けが必要。
是正・モニタリング
  • 監査で指摘された問題点についてはサプライヤーに是正計画の作成を依頼し、指摘事項の重要度に則したフォローアップを行う。
  • サプライヤーに対する説明会や研修の実施、好事例の共有などを通じて継続的に改善を求めることが重要。
情報管理・情報開示
  • 情報管理は「一元管理型」「情報プラットフォーム型」「Excel等での自前管理」の3種類ほどの手法に分かれるが、それぞれにメリット・デメリットが多いので、自社の目的やフェーズに合わせて活用を考える。

いずれのフェーズも、同じことの繰り返しではなく、定期的に活動を見直し、継続的に改善させていくサイクルをつくることが重要です。

サステナブル・サプライチェーンマネジメントへのアプローチ

サプライチェーンマネジメントを実施するにあたっては、水平アプローチ(直接取引する一次サプライヤーに問題がないかを網羅的に確認・対応)と垂直アプローチ(リスクの高い特定品目や社会課題を軸に深掘り調査・対応)の大きく2つのアプローチがあります。

基本は水平アプローチになりますが、特に社会課題との接点が疑われる品目を調達したり、特定の社会課題と関係が深い事業を営んだりしている場合、垂直アプローチを検討されるとよいでしょう。

また、関連方針/ガイドラインの策定に関しても同様に、網羅的な方針を定めつつ、特定の課題については個別方針を策定して、自社のスタンスを明確に発信することが必要です。

最後に、サプライチェーン評価やリスク特定をするにあたっては、調査票に基づくアンケートやヒアリングを行っていくことが一般的ですが、収集結果の分析・対応に際しては、時間軸(短期・中期・長期での評価と対応検討)に留意する必要があります。

  • 本稿に関する詳細のお問い合わせや、サステナブル・サプライチェーンマネジメントに関するご支援のご依頼は、こちらからお願いいたします。https://www.cre-en.jp/contact/