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サステナビリティレポート2022動向調査結果

サステナビリティレポート動向調査チーム
(株式会社クレアン)

気候変動や人権問題などの多種多様な社会課題、ESG投資の増加や非財務情報も含めた企業評価の多様化、改訂コーポレートガバナンス・コードの公表や国内外における開示要請の高まりなど、近年サステナビリティに関連する動向は目まぐるしく変化しています。それと同時にレポーティングの在り方や開示内容も年々変化し、各社とも毎年改善を重ねるとともに新たな開示方法も見られるようになりました。

本調査結果では、サステナビリティレポートにおいてステークホルダーの関心が高いと思われる項目を中心に、以下の側面から【報告ポイント】をご紹介します。

■ 環境
  • 気候変動(TCFD)への対応状況
  • 生物多様性(TNFD)への対応状況
■ 社会
  • 人権(苦情処理メカニズム)の対応状況
  • 人的資本(人材育成)の開示状況
  • 多様性(男女間賃金差)の開示状況
■ ガバナンス
  • 役員報酬へのサステナビリティ指標の導入状況
  • 役員の多様性(ジェンダー)の開示状況
調査概要

■期間
2022年9月~11月実施。

■対象企業
2021年FTSE blossom Japan 4.0以上の46社対象。

■対象媒体
対象企業のサステナビリティ/CSR/ESGレポート等の関連媒体、および対象企業の統合報告書、有価証券報告書(WEB、PDF、冊子いずれも含む)。
また、期間における最新媒体を査読(企業によっては、2022未発行のため2021を参照とした場合もある)。

気候変動(TCFD)への対応状況

【報告ポイント】
対象企業の約半数の企業が、気候変動の財務影響を開示している。
  • 金額ベースで開示しているのが35%、金額の大中小で開示しているのが13%。
  • 投資家からは、具体的な金額の開示が期待されているため、今後も金額ベースの開示が増えると考えられる。

生物多様性(TNFD)への対応状況

【報告ポイント】
TNFDに言及している企業は、46社中8社あるが、実際にTNFDの枠組みを試行した開示はなし。
  • 「記載あり」のうち多くは、TNFDフォーラムへの参画について記載している。
  • その他、調査企業以外の先進例としてはLEAPアプローチの試行、次年度開示に向けた準備状況などを記載している。
  • TNFDに言及していない企業も、調達関連を含め、生物多様性・自然資本に関する記載は充実しつつある印象を受ける。

人権(苦情処理メカニズム)の対応状況

【報告ポイント】
人権対応の対象の幅は拡がっており、より広いステークホルダーへ対応をすることが求められている。
  • 調査対象企業のうち殆どの企業が何らかの苦情処理メカニズムを構築している。
  • 調査対象企業のうち28社が、苦情メカニズムの対象として、従業員・顧客のみならず、取引先も対象としている。
  • また、四分の一の企業が、従業員・顧客・取引先に加え、NGOや地域社会等を含むステークホルダーを対象にした苦情処理メカニズムを構築している。

人的資本(人材育成)の開示状況

【報告ポイント】
事業戦略に沿った人材育成・採用計画の開示が進む。
  • 調査対象企業のうち8割の企業が、中期経営計画や事業戦略に紐づけて人材育成計画、および人材に関するKPIを設定している。
  • 労働生産性向上のためのKPIを設定したり、人材育成にかかる投資、施策を講じる企業もある。
  • 人的資本レポートを作成する企業も出てきた。

多様性(男女間賃金差)の開示状況

【報告ポイント】
既に2割以上の企業が男女間賃金差を開示。
来年度から開示が義務化となるため対応必須。
  • 調査対象企業のうち2割強の企業が現時点で開示を行っている。役職別での開示が多数であるが、開示方法についてはばらつきがある。
  • 2022年女性活躍推進法改正により、来年度から開示が義務化するため、対応が必須となる。開示方法(正規労働者・非正規労働者・全労働者)にも留意。

役員報酬へのサステナビリティ指標の導入状況

【報告ポイント】
導入の宣言から具体的な算定式の開示までレベルの幅はあるものの、サステナビリティ指標の導入の動きは継続している。
  • 開示媒体は有価証券報告書やコーポレート・ガバナンス報告書に加え、統合報告書でデザイン化して開示する事例が見られる。
  • 役員報酬の設計(制度)は各社各様だが、固定報酬ではなく変動報酬(賞与や業績連動等)の指標として導入する企業が大半。
  • 中期経営計画やマテリアリティに紐づけた指標を用いるケースが多く、具体的な指標としては、例えば環境ではCO2排出量の削減率、社会面では社員エンゲージメント調査の結果等がある。
  • サステナビリティ指標導入の27社のうち26%が外部評価を指標として利用。

役員の多様性(ジェンダー)の開示状況

【報告ポイント】
取締役におけるジェンダーの多様性の開示は定着しているが、執行役員における開示は限定的であり、女性比率も多くの企業で10%未満にとどまる。
  • 取締役の女性比率は15.6%、執行役員では6%にとどまる。
  • 取締役と執行役員の女性比率では有意な相関関係はみられなかった。
  • 76%にあたる33社の執行役員の女性比率が10%未満にとどまる。