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マテリアリティの特定にむけて着手時に検討すべきこと

マテリアリティ・KPIに関する社内検討チーム

株式会社クレアンでは、企業の皆さまからサステナビリティ・ESGに関わる様々な課題対応についてお問い合わせをいただいています。中でも、お問い合わせが多い「マテリアリティの特定」に着手される際のポイントについて、本コラムで取り上げたいと思います。

マテリアリティ(重要課題)に関するお問い合わせは、サステナビリティ関連部門またはその役割を今後担う予定の部門の方からIIRCなどの国際的フレームワークへの対応を念頭にいただくことが多いのですが、その際、マテリアリティの特定にむけた企業側の実施体制には以下のような課題(=認識・準備不足)が存在する場合があります。

【マテリアリティの特定に着手する企業の実施体制面の課題】
  • 経営層の理解と全面的関与を得ていない
  • マテリアリティ特定後の「戦略・計画への統合」と「活動推進」を見据えた検討メンバーをアサインしていない(事業部門や経営企画部門の参画、及び経営層や関係部門と経営者目線でマテリアリティの検討・橋渡しができる事務局メンバーのアサインが望ましい)
  • マテリアリティ特定後の活動推進に必要な「ゴール・KPIの検討」とプロジェクトを連動させていない

マテリアリティとは、一言で言うと「理念、内部環境、外部環境動向を踏まえ、企業が持続的成長を実現するために中長期的に取り組むべき重要課題(長期的価値創造の実現に重大な影響をもたらす事象)」です。

ESGの文脈からマテリアリティの特定が求められることが多い状況ですが、本質的には企業の中長期の在り方を考え、対処すべき課題を統合的視点(統合思考)から考えたものに他ならず、経営者が取り組まれる事柄です。マテリアリティの検討は事業領域と事業を支える経営基盤領域の双方に及び、特定したマテリアリティは中長期の戦略・計画の中核に位置付けられる必要があります。このため、上記1.のように、マテリアリティを特定する必要性と意義を経営陣に十分ご理解いただき、全面的にバックアップを得ることが最初に重要となります。そして、これが2.以降の課題対応に影響します。

次に、IIRCなどが求めるマテリアリティは財務・非財務両面の課題からなり、経営の最高意思決定機関で承認され、長期経営計画や中期経営計画などの戦略・計画に完全に統合されることが求められています。そのため、上記2.のように、事業部門と経営企画部門を含め関係するすべての部門の参画がなければ、企業にとって最も重要な本業を通じた価値創造につながる重要課題を適切に特定できなかったり、全社の戦略・計画にうまく統合されない可能性があります。また、マテリアリティ特定後に課題対応を担う部門の方が、自分達が関与することなく重要課題が検討・決定されていた場合、重要課題へのコミットメントが得られなかったり、オーナーシップを持って課題解決に取り組んでいただけなくなる可能性が生じます。このため、マテリアリティの検討段階から参画いただくことが重要となります。そして、マテリアリティの検討は、これまで十分考慮してこなかった人権や環境面などの要素も検討の俎上に乗せ、部門横断メンバーで検討を進めるため、ESGに関わる知見をインプットしつつ、経営陣や多様な部門メンバーとの検討を橋渡しできる事務局メンバーの存在が何よりも重要となります。

最後に、3.で記載した通り、マテリアリティは特定して終わりではなく、経営戦略の中核に統合し、持続的成長を実現する上で乗り越えなければならない課題を解決することが最終目的となるため、どのような「ゴール(課題解決で目指す達成像)」にむけて活動を進め、その「進捗・達成度」はどうかが、資本市場などのステークホルダーの最大の関心事となります。そのため、「ゴール」と活動の進捗・達成度を評価する「KPI」の設定が、マネジメントとアカウンタビリティの両面から重要となります。その際、「マテリアリティの特定」と「戦略・計画への落し込み」のプロジェクトを分けてしまうと、戦略・計画への落し込みを進める際に、新規メンバーにマテリアリティの必要性やESGに関わる情報を再度インプットする必要が生じ、追加の労力や新旧メンバーでの理解・認識の齟齬、議論再燃リスクが生じ、効率的で深い議論の支障となります。そのため、「マテリアリティの特定」と「戦略・計画への落し込み(ゴール・KPIの設定など)」は、出来るだけ同じメンバーにより出来るだけ連続性をもって進めることが効果的です。

マテリアリティの特定に着手することをお考えの担当部門の方々におかれては、上記の点を事前に十分ご考慮いただくことがプロジェクトの成功確率を高めることにつながると考えています。

株式会社クレアンでは、マテリアリティの特定とそれに伴うKPIの設定に幅広い知見と抱負な実績を持っています。ご支援にあたっては、事前の社内各部門への働きかけや、マテリアリティ特定のための社内体制の構築など、きめ細かく、また幅広いご支援をさせていただきます。より詳しい情報をお知りになりたい方は、以下のリンクからお問い合わせください。