Sustainabilityマガジン(vol.4)2011.4.28号
Sustainability マガジン vol.4 (2011.4.28号)
========================= http://www.cre-en.jp/
先日、石巻市を訪問し、現地の方のお話を伺う機会がありました。
# 津波で甚大な被害を受けた石巻の町内会の人がNGOやボランティアの人たち
を招待して花見をしました。本当にみんな感謝しています。その姿を見て、
私も涙が出てきました。
# 今の苦しい時期に支援してくれた企業のことは絶対忘れません。将来何か
あるときは、そういった企業と手を組みます。
(石巻災害復興支援協議会 伊藤会長)
今回は、弊社で企画した「企業による石巻訪問先遣隊」についての報告を掲載
します。是非ご覧ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆ 1. Sustainability Colum
◆◇ ~ 企業は特定地域の特定課題解決にコミットすべき ~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
現代の組織社会においては、組織が様々な課題を解決する役割を担っている。
それは、今回の震災においても同じである。国、自治体、自衛隊、NPO/NGO、
それぞれの組織がそれぞれの役割において被災者の支援を行なっている。
しかし、現代社会における課題解決の最強組織である企業がまだ十分に力を
発揮していない。
スターバックスは、ハリケーンカトリーナの爪痕が残るニューオーリンズで、
CEO以下1万人規模のボランティアを行なった。その際の生産性は、通常のボラ
ンティアの2倍近いものであり共に働いたNGOを驚かせたという。そう、企業に
は力があるのだ。
なお、このボランティア活動は、当時創業以来始めて赤字を出していたスター
バックスの社員が自信と誇りを取り戻すとともに、社外的イメージを向上させ
るターニングポイントとなったという。
IBMは、Corporate Service Corpsというプログラムを展開している。IBMのグロ
ーバルオフィスから選抜された社員がチームとなり、途上国の社会課題を解決
するというプログラムだ。このチームでの課題解決の経験は、IBMのグローバル
リーダー育成に大いに役立っているという。そう、通常業務と離れた課題解決
の場は、人を育てる機会となり、企業にもメリットがあるのだ。
被災地では、復興に向けた多くの課題がある。行政や自衛隊の手の回らない課題
も沢山あり、NGO/NPOは非常に頑張っているが、まだまだサポートが必要である。
企業が、「特定の避難所の炊き出しを被災者が仮設住宅に入るまで行なう」
「特定の商店街の店がすべて再開できるまでサポートする」など、課題解決
にコミットしてくれれば、被災地の復興を大いに促進することは間違いない。
企業の担当者には、特定地域の特定課題解決へのコミットメントを是非検討して
欲しい。
(水上武彦、CSRコンサルタント)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆ 2. 「企業による石巻訪問先遣隊」のご報告
◆◇
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
先回、「企業による石巻訪問先遣隊」を募集し、企業の社員による被災地での
ボランティア活動を行ないました。以下に、概要をご報告します。
●企業による石巻訪問先遣隊の概要
日 時: 4月22日~24日 (車中泊2泊)
場 所: 宮城県石巻市
参加者: 33人 (参加企業数14社、クレアンスタッフの参加は11名)
●現地での主な活動
1)ボランティア拠点の視察
災害ボランティアセンターや石巻復興支援協議会など、各ボランティア団体・
協議体が拠点としている石巻専修大学のキャンパス内を視察。
その中で、国際NGO「ピースボート」の支援物資庫には、日本各地から支援物
資が届く一方、「営業を再開した地元商店の営業妨害にならないように気を
付けている」など、物資の供給をめぐる細やかな対応について説明を受けた。
また、グラウンドにはボランティアが寝泊りするテントが並んでいたが、強風
や雪によって壊れてしまうケースも多いとのこと。実際、23日は強い雨風に見
舞われ、複数のテントが浸水や倒壊していく現場を目撃し、「被災地支援ボラ
ンティアの住環境改善」という大きな課題を実感した。
2)被災状況の確認
ボランティアワークに向かう途中では、被災状況を確認することができた。特
に沿岸部では、津波によって「すべてが流されてしまった」状況が眼前に。多
くの参加者が声を失うと同時に、復興への道のりは長いことを実感した。
市の中央部でも、横転した車や泥に浸かった家屋などが放置されている場所が
多く、被災1カ月が過ぎた今でも、爪あとの深さを物語っていた。また、地盤沈
下に伴い、冠水している道路も散見された。満潮時には通行止めになる道も少な
くはなく、参加者は復興への課題の多さを学んだ様子だった。
3)ボランティアワーク体験
次にボランティアワークをさせていただく、石巻市中央部の商店街に向かった。
ピースボートのコーディネートで3~20人ほどのグループに分かれ、各店舗で泥
かきなどを行った。
同商店街でもほとんどの店舗が2メートル以上の津波に襲われ、被災した。それ
でも地域復興の象徴となるべく、営業再開準備を進める店舗が多い。
大半の参加者にとって、今回が初めての被災地支援ボランティアワークだった。
スコップやブラシを手に、全身ヘドロまみれになりながら作業を行なった。降
ってきた冷たい雨に打たれながら、黙々と作業を続けた参加者からは以下のよ
うな感想が聞かれた。
・「正直、覚悟を上回る大変さだった。この作業をずっと続けていかなければ
ならない被災者の皆さんの大変さが身に染みた」
・「泥ってこんなにしつこいのか、と愕然とした」
・「あんなに冷たい水を久しぶりに触った」
4)炊き出し準備の見学
ボランティアワークの後は、避難所の炊き出し準備を見学。石巻市では現在、
1日平均約3万食の炊き出しが実施されており、行政や自衛隊(合わせて約1万
8千食)の届かない部分を、NPOや個人有志の炊き出しがカバーしている。
今回見学させていただいた市立蛇田小学校には約200人が避難。ここでは、NPO
法人キャンパーの指導の下、被災者自身が自立して食事を作る態勢づくりが進
められていた。
被災者に迷惑をかけないよう、避難所内にはお邪魔しなかったが、「長期の
避難生活を過ごしても生活再建の道筋が立たず、被災者が疲弊してきている」
「学校の新学期開始に伴い、避難所の確保が難しくなってきている」などの
状況が伝えられた。
5)地元キーマンとの意見交換
23日夜には、石巻災害復興支援協議会の伊藤秀樹会長と石巻市へのボランティ
アスタッフの派遣や炊き出し等の現地の実行支援などを行なっているNGOピース
ボートの共同代表である山本隆にお越しいただき、現地の状況や企業への期待
などについてお話を伺った。
まず伊藤会長からは、災害復興支援に関わるNPO/NGOの連携の場となっている
「石巻災害復興支援協議会」について説明を受けた。現在は、市民団体同士の
連携にとどまらず、役所や社会福祉協議会・自衛隊などがマルチステークホル
ダーで連携して災害復興支援を行なう場として機能しており、海外からも注目
を集めるモデルケースとなりつつある。
未曾有の緊急事態の中、「役所の縦割り行政を批判している暇などない。それ
を乗り越えて、役所や自衛隊やNPOなどが一丸となって支援活動ができる態勢
を整えた。これこそオールジャパンの取り組みだ」と胸を張る。
・ 同協議会の詳しい内容:
http://gambappe.ecom-plat.jp/index.php
その上で、「ぜひ企業の方にも参加してほしい。企業ボランティアにとっても
いろいろな気付きや感動を得ることができるはず」との呼びかけがあった。
一方、山本代表からは企業が実践できる具体的な4つの支援方法の提示があった。
(1) 継続的なマンパワーの提供
→ 今後、被災地への関心が次第に低下し、個人ボランティアの減少が予想
される。しかし、大量にある泥かき作業などのニーズは尽きない。是非、
企業からも継続的にマンパワーを提供いただきたい。
(2) 活動資金の提供
→ ボランティアを組織化する団体が機能しないとボランティアの力を最大
化できない。よって、資金面での支援をお願いしたい。
(3) 避難所の炊き出し支援
→ 1つの避難所に絞り、特定の企業に食材や人材面で、長期かつ全面的
に炊き出しを支えてもらうモデルを現在検討している)。費用は多くても
月100万円ほどで期間は数ヶ月以下を見込んでいる。
(4) ボランティアの宿泊場所・移動手段の提供
→ 被災地での支援は長期に亘るが、いつまでも大学にテントをはり続ける
ことはできない。宿泊場所と現地への移動手段がないと活動そのものが
継続できない。この支援をお願いしたい。
参加者からも質問が相次いだ。「この協議会が成功している要因」についての質
問では、「もともと石巻に外部文化を受け入れる機運があったこと」「ピースボ
ートをはじめとするNGOと信頼関係が築かれていること」などが要因として挙げら
れた。
最後に伊藤会長から「手伝ってくれているボランティアに、涙を流して感謝して
いる人も多い。本当にありがたい存在だ。今後、復興期に移れば、企業の存在は
さらに大きくなる。だからこそ復興後に、企業と商品開発をする場合などには、
支えてくれた人たちや企業と手を組みたい」との言葉があった。
● 参加者の感想
帰京するバス内では、参加者から以下のような感想があった。
・体験しないと伝わらないことがある、言葉だけでは伝わらないことがあるこ
とを知った
・終わりの見えない作業に無力感を感じた、まだまだ復興への道のりが長いこ
とことを痛感した
・現地にはまだいろんなニーズがあり、企業が手伝える部分が多いことに気が
付いた
・1カ月以上経ってからボランティアに行っても遅いのかなぁ、という思いも
あったが、まだまだ課題がたくさんあることに驚いた
・モノやカネ以外にも、企業ならではの支援方法を本気で模索する必要がある
と感じた
・現地の人々の前向きさ、明るさに逆に励まされた
・復興した石巻をもう一度見てみたい
・雨の中、黙々と洗い物をする被災者の姿に感銘を受けた。本気で何とかして
あげたいと思った
現地の熱い想いと期待を受け止めての帰京となった。
※ 写真等も加えた詳しい報告を近日中に弊社ホームページに掲載予定です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆ 3. 新着Topics & News
◆◇ ~ サステナビリティ関連の動きからトピックスを紹介 ~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ サステナビリティ日本フォーラム 「東日本大震災 企業の取り組み」
東日本大震災に関して企業が行なっている支援活動を調査・公表。
→ http://www.sustainability-fj.org/disaster_assistance/#long
◆ the Arabia CSR Network 「アラビアCSRアワード (ACSRA)」を設立
グローバル・コンパクトが支援し、新たなCSRアワードが設立されました。
ISO26000がアラブの国々を含めて発行しましたが、一層、CSRがアラブ世界
でも発展していくことが予想されます。
→ http://www.unglobalcompact.org/news/116-04-24-2011
◆ ワールドウォッチ研究所 FUKUSHIMAの後の原子力についてレポート
2010年は再生可能エネルギーが初めて原子力エネルギーを上回った年となり
ました。また、原子力はコストが安いと言われてきましたが、今後はコスト
的にも、原子力エネルギーがどんどん割高になる一方、太陽光エネルギーの
コストが低下し、逆転することが報告されています。
→ http://www.worldwatch.org/end-nuclear
→ http://www.worldwatch.org/system/files/WorldNuclearIndustryStatus
Report2011_%20FINAL.pdf
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【 メール情報誌の名称: Sustainability マガジン 】
※ 本メールは、持続可能な社会にむけた企業と市民社会の取り組みに関する
情報を、隔月を目安にお届けするメール情報誌です。
※ メールマガジンの転送は歓迎です。複製・転載は事前にご相談下さい。
※ このメール情報誌は、株式会社クレアン及び株式会社CSR経営研究所の
スタッフと名刺交換させていただいた方にも配信しております。この
メール情報誌がご不要の方は、お手数ですが下記のアドレスより配信の
解除をお願いいたします。
▽ メールマガジンの配信解除
http://www.cre-en.jp/library/mm/
▽ ご連絡先
sustainability(アットマーク)cre-en.jp 「(アットマーク)」は、「@」に置き換えてください
▽ 発行: 株式会社クレアン
東京都港区白金台3-19-6 白金台ビル5F (〒108-0071)
TEL. 03-5423-6920
HP . http://www.cre-en.jp/
Copyright(c)2011 Cre-en,Inc. & The CSR Institute,Inc. All Rights
Reserved.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━