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Sustainabilityマガジン(vol.6)2011.9.22号

Sustainability マガジン vol.6 (2011.9.22号)
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今回は「ステークホルダー・エンゲージメント」についてのコラムを中心に
お届けします。

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◇◆ 1. クレアンからのお知らせ
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●1 第2回「CSRコンサルタントによる基礎と実践一体講座」ご案内
  好評をいただいたCSRセミナー「CSRコンサルタントによる基礎と実践一体講座」
の第2回目を開催します。少人数での参加型形式を特長としています。詳しくは
弊社ホームページをご覧ください。
→ http://www.cre-en.jp/library/seminar/110915/


●2 中国農民工NGOのリーダーを訪ねるツアー
 中国に進出する企業の最大のCSR課題は、労使や労働環境に関わる課題です。
 特に、都市就業人口2億8千万人のうち1億5千万人は農村からの出稼ぎ労働
者、所謂、「農民工」と呼ばれる人々であり、近年、中国ではこの「農民工」の支援
を行なうNGOが急速に発達し、労使問題や労働慣行に関わる社会課題の解決
に重要な役割を果たすようになっています。
この度、クレアンでは、中国の7つの有力農民工NGOのリーダー達との対話を
行なうツアーを企画しました。ツアーには中国の市民団体のネットワークに詳しく、
日中の市民社会の交流に一貫して取り組まれている日中市民ネットワークの
李 妍炎(リ ヤンヤン)氏にも同行いただきます。
詳しい情報をお求めの方は、以下のお問合せ先までご連絡ください。詳しい資料
をお送りいたします。

お問合せ先: 山口 智彦 (CSRコンサルタント)
メールアドレス: ty(アットマーク)cre-en.jp 「(アットマーク)」は、「@」に置き換えてください
TEL: 03-5423-6920 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◆ 2. Sustainability Colum ◆◇     ~ ステークホルダー・エンゲージメント考 ~ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1.はじめに  国際標準化機構が2010年11月に発効した組織の社会的責任に関する国際規格 ISO26000は、組織と社会との相互作用(ステークホルダー・エンゲージメント)を基盤 概念としている。本稿ではステークホルダー・エンゲージメントについて、その本質を 考えたい。 2.すべての組織は社会との間に「ずれ」がある 大は国のような共同体から、小は町内の囲碁クラブまで、あらゆる組織は、組織とし て活動を始めた時から、社会とは異なる独自の価値観や論理を持つ一種の「閉じた 社会」となる。 組織は、「これが自己」と考えるアイデンティティが強固であるほど、求心力は高まり、 社会に影響を及ぼす力も強まる。このため、組織は自己のアイデンティティを強化し、 保持することを欲する。このアイデンティティの安定欲求は組織の根源的な本能と言え、 組織が存在する証であるとも言える。 しかし、組織の価値観・理論が、独自性を超えて「一人よがり」となり、社会が望む 方向と乖離すると、組織の発展を阻害し、場合によっては組織を破壊する見えない 強力な壁となる。 3.ステークホルダー・エンゲージメントとは 組織が社会の中で生きていくためには、自己と社会との間の違い(ずれ)をありのま まに見て、よく認識することがまず必要である。その上で、そのずれは何に起因するの か、そのずれは自己にとって良いものか、社会にとってはどうか、そのずれはあった方 が良いのか、無いほうが良いのかを判断し、必要なものは自己に取り込んで対応し、 必要でないものは取り除くという営みを、健全に機能させることが必要となる。このような ずれを取り除くことは、企業経営における見えざるリスクを解消し、社会の変化に企業 を適応させることにつながる。 では、自己と社会(多様なステークホルダー)のずれはどのように確認すれば良いの か。企業であれば、取引先や顧客や従業員などのステークホルダーとの日々の「対話」 「折衝」などのコミュニケーションが該当する。日常のコミュニケーションでカバーできな いテーマについては、NGOや地域住民や労働組合や監督官庁などと特別の対話の 場を設けることも必要である。 次に、認識したずれに組織として「対応」するためには、組織の正式な統治プロセス の中でずれの重要性や意味合いを「よく考慮(検証)」することが必要となる。よく考慮 を行なえば、社会やステークホルダーとのずれを解消するための、さらなる「対話」や 「折衝・協働」などの次なるアクションが生まれる。 このようなずれの把握と解消にむけた、「対話」「検証」「対応(折衝・協働)」の一連の ステークホルダーとの相互作用のプロセスを総合した概念が、「ステークホルダー・エン ゲージメント」である。 4.ISO26000におけるステークホルダー・エンゲージメント  ステークホルダー・エンゲージメントはISO26000を構成する概念の中でも最も重要な 要素の一つである。持続可能な発展に至る正しい道がわからない中、組織はさまざま なステークホルダーとの対話と協働を通じて、社会とのずれや利害を把握・解消し、この 積み重ねを通じて持続可能な発展への貢献を目指すことが期待されている。 そういう意味では、良い取り組みを行なっているつもりでも、実際のステークホルダー との対話に基づかない自問自答・自己完結型(自己満足型)のCSRでは、「ISO26000 の考え方を尊重してCSRに取り組んでいる」とは言えないであろうし、持続可能な発展 への貢献を目差していると言っても「本当にそうなの?」と言われても仕方がないだろう。 過去の歴史を振り返っても、少数者により自問自答型の狭い視野の中で意思決定が なされた事案は、後に大きな過ちにつながっていることが多い。今回の福島原発の問 題も同様であろう。 真に社会に貢献し、社会から尊敬に値する企業をめざすのであれば、今こそ企業は 胸襟を開き、自らにとって耳が痛いことを述べるステークホルダーとも進んで対話を重 ね、企業の経営を「社会」に向けて開いていくことが必要である。それが、多様な価値観 を持つさまざまなステークホルダーが存在し、多くの不確実性を内包するグローバル 経済の時代に、企業が存続し続けるための経営姿勢であると考える。 (山口 智彦、CSRレビューフォーラム 共同代表※、株式会社クレアン 株式会社 CSR経営研究所 CSRコンサルタント) ※ CSRレビューフォーラム : 企業と市民社会との創造的なステークホルダー・エンゲージメントの実現 を目差す非営利組織。WEBサイト: http://www.csr-review.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◆ 3. 新着Topics & News ◆◇   ~ サステナビリティ関連の動きからトピックスをご紹介 ~ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は6つのトピックスをご紹介します。 ●1 OECD多国籍企業行動指針の日本語仮訳版公表   行動指針の改定は10年ぶりです。今回は人権やナショナル・コンタクトポイント (NCP)に焦点をあてた改定が行なわれました。 : http://www.oecdtokyo2.org/pdf/theme_pdf/enterprise_pdf/
20110902guide_multinational_jp.pdf
●2 ISO26000の海外での活用 日本ではISO26000のJIS化が進められていますが、ドイツでは国際一致規格の 策定が進められており、オランダでは自己宣言型の国内規格の策定を進めてい ます。また、2011年の11月にはブラジルのリオで、ISO26000発行1周年を記念 するオープン会議が開催される予定です。この場で、日本企業のグッドプラクティ スが世界にむけて発信されることを期待したいと思います。 : http://www.j-fbs.jp/news_iso26000trend.html ●3 CDPが「CDP Global 500 Report」を発行(英文) 多くの企業で気候変動問題をビジネス戦略に統合化する動きが本格化している との報告がなされています。Carbon DisclosureおよびPerformanceのリーダー シップ企業としては日本からはホンダとソニーが紹介されています。 また、non-responding companiesには、Amazon.com、Bank of China、Appleなど がリストアップされています。 : https://www.cdproject.net/en-US/Pages/global500.aspx ●4 統合レポートに関するディスカッションペーパー公表 (IIRC) 統合レポートとは何かから、国際統合レポートフレームワークの5つの原則(案) の紹介、そして各ステークホルダーにとっての統合レポートの意味合い等に ついて記載しています。 : http://www.theiirc.org/the-integrated-reporting-discussion-paper/ ●5 デトックス・ウォーター・キャンペーン (グリーンピース) 国際環境NGOグリーンピースは、2011年7月から世界の主要アパレルメーカー を対象に化学物質による水汚染をなくす「デトックス・ウォーターキャンペーン」を 推進しています。このキャンペーンは、アパレルメーカーの生産工場の排水が 流れ込む河川、各工場の排水口、及びその工場で生産・加工され、市場に流通 した製品を対象に、化学物質(ノニルフェノールエトキシレート:NPEs)の含有 調査を世界規模で積み重ね、その結果を元にNike等のアパレルメーカーに 有害化学物質による水汚染の防止を求めて直接交渉を行ないました (2011年 8月23日公表のレポート「Dirty Laundry2: Hung Out to Dry」のP24~P25には 調査対象となった主要ブランドの調査結果が公開されています) その結果、Puma、Nike、Adidas、H&Mのキープレイヤー各社は、「2020年までに 有害化学物質の使用をゼロにすることを目差す」ことに合意したということです。 日本ではユニクロが対象となっており、2020年という期限については触れていな いものの、排出の削減・ゼロ化にむけて取り組むことを宣言しています。 これらの宣言は、サプライチェーン全体で特定の有害化学物質の排出ゼロ化を 進めるもので、社会の公益の観点からは画期的なものと言えます。 : http://www.greenpeace.org/japan/ja/campaign/csr/detox_water/ http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/hm/blog/36968/ http://www.fastretailing.com/jp/csr/environment/reduce.html また、上記とは異なりますが、同団体ではグローバルな調査・分析に基づき、 今後の世界および日本を含むいくつかの国のエネルギー政策のシナリオに ついてのレポートも公表しています。  : http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/er_summary.pdf ●6 GRIガイドライン第4版(G4)の第一次パブリックコメント開始 GRIガイドラインが2013年の第4次改訂にむけて、一回目のパブリックコメント を開始しました。コメントの提出期限は2011年11月24日です。 : http://www.globalreporting.org/CurrentPriorities/G4Developments/
GetInvolved/GetInvolved.htm
(荒木 茂善) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 メール情報誌の名称: Sustainability マガジン 】 ※ 本メールは、持続可能な社会にむけた企業と市民社会の取り組みに関する   情報を、隔月を目安にお届けするメール情報誌です。 ※ メールマガジンの転送は歓迎です。複製・転載は事前にご相談下さい。 ※ このメール情報誌は、株式会社クレアン及び株式会社CSR経営研究所の   スタッフと名刺交換させていただいた方にも配信しております。この   メール情報誌がご不要の方は、お手数ですが下記のアドレスより配信の   解除をお願いいたします。 ▽ メールマガジンの配信解除   http://www.cre-en.jp/library/mm/ ▽ ご連絡先   sustainability(アットマーク)cre-en.jp 「(アットマーク)」は、「@」に置き換えてください ▽ 発行: 株式会社クレアン       東京都港区白金台3-19-6 白金台ビル5F (〒108-0071)       TEL. 03-5423-6920       HP . http://www.cre-en.jp/ Copyright(c)2011 Cre-en,Inc. & The CSR Institute,Inc. All Rights Reserved. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━