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Sustainabilityマガジン(vol.8)2011.11.14号

Sustainability マガジン vol.8 (2011.11.14号)
========================= http://www.cre-en.jp/

今回は、最近のレポート動向を中心に、CSR/サステナビリティに関し、
皆様のお役に立つ情報を提供しております。是非、ご覧下さい。



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◇◆ 1. クレアンからのお知らせ
◆◇    レポートに関する最新動向、ISO26000推進などについて
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最近、下記調査レポートおよびコンサルティング紹介資料を、弊社ウェブ
サイトに掲載いたしました。

●「統合レポートの動向~情報開示の新潮流」
 統合レポートの出現の背景、IIRCによる統合レポートの枠組み、2011年
統合レポート発行企業の事例をまとめています。

 → 掲載ウェブサイト:
http://www.cre-en.jp/library/opinion/pdf/111102.pdf

●「2011年CSRレポート動向 速報版」
 2011年9月までに発行されたCSR/サステナビリティレポート計95社
(国内83社、海外12社)を踏まえた、最新の概要やトレンド、掲載
事例についての報告および論評です。

 → 掲載ウェブサイト:
   http://www.cre-en.jp/library/opinion/pdf/111028.pdf

●「ISO26000の導入に関するご紹介資料」(再掲)
 クレアンでは、ISO26000についての知見の深い方々や企業の方々など
と協力しながら、企業のCSR活動をISO26000に照らして分かりやすく
効率的に自己チェックするリストを開発いたしました。本資料では、ISO
26000に関する企業事例や上記チェックリストを用いたコンサルティング
プロジェクトをご紹介させて頂いています。

 → 掲載ウェブサイト:
http://www.cre-en.jp/service/pdf/ISO26000_1110.pdf

●「クレアンのCSVコンサルティングのご紹介」(再掲)
 企業価値と社会価値を両立させる取り組みCreating Shared Value(CSV)
に関する資料の抜粋です。
 → 掲載ウェブサイト:
   http://www.cre-en.jp/service/pdf/CSV_1110.pdf


 なお、資料のみでは分かりにくい点があるかと存じますので、ご興味の
ある方は、遠慮なく下記までご連絡下さい。弊社コンサルタントが分かり
やすくご説明させて頂きます。また、必要に応じて、講演またはワーク
ショップなどを実施いたします。
 
【連絡先】
・代表TEL 03-5423-6920
・E-mail  service(アットマーク)cre-en.jp「(アットマーク)」は、「@」に置き換えてください



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◇◆ 2. Sustainability Colum
◆◇    ~ ステークホルダー・エンゲージメント「戦略」を考える ~
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マッキンゼーのグローバル・マネージング・ディレクターであるドミニク・
バートン氏は、最近のハーバードビジネスレビュー誌の論文で、昨今の経済
危機を踏まえ、資本主義は「長期資本主義」への転換が求められており、
そのために必要な3要件として、以下を挙げている。

1.企業と金融機関が長期に焦点を合わせられるような、インセンティブと
組織構造の刷新
2.ステークホルダーの利益に資することが、企業価値最大化のために不可欠
であることの組織内への徹底
3.取締役会のガバナンス能力の強化

本コラムでは、このうち、2.の「ステークホルダー利益への貢献」について
考えてみる。

バートン氏も同論文で述べており、私も企業の方々のコンサルティングを
しながら感じることだが、現在の企業では、企業価値の最大化とステーク
ホルダーへの貢献は対立関係にあり、ステークホルダー・エンゲージメント
なども、義務的なコストという認識をもたれている方が多いように思う。

一方で、マッキンゼーが約2000人の執行役員と投資家に調査した結果に
よると、「ESGへの取り組みが長期的に企業価値を創造するか?」という
問いに対し、75%以上がYesと回答している。

要は、「ステークホルダー・エンゲージメントは重要だと思うし、長期的な
企業価値向上には結び付くように思うが、具体的効果がイメージできない
ので、当面の活動としては、それほど積極的でなく義務的にやっている。」
といった状況なのではないかと思う。

すなわち、現在のところ、ステークホルダー・エンゲージメントに「戦略」
がないのだ。

「戦略」には、まず「目的」が必要である。企業活動の目的が“企業理念
の実現”または“企業価値の向上”である以上、ステークホルダー・エン
ゲージメント戦略の目的も同じであるべきだろう。一般的には、“長期的な
企業価値の向上”とするのが良いのではないか。

では、“長期的な企業価値向上”に向けたステークホルダー・エンゲージ
メントは、如何にあるべきか?

キーワードは、「リスクマネジメント」「イノベーション」「バリューチェーン
および競争基盤の強化」である。

【リスクマネジメントのために】
このうち、「リスクマネジメント」の視点は、多くの方が認識している
だろう。ステークホルダーが企業から不利益を得ている、または十分な
利益を得ていないと感じれば、それはリスクとなる。直接のステーク
ホルダーが不満の声を上げなくても、社会やNGO/NPOといった間接
的ステークホルダーが問題視するリスクがある。最近では、ソーシャル
メディア等の力を得て、こうした不満や問題視の声の影響力は高まっている。

ここで問題となるのは、「実際はどうであるか」ではなく、「ステーク
ホルダーがどう感じるか」である。ここにステークホルダー・コミュニ
ケーションが重要となる理由がある。

特に、事業のグローバル展開においては、従来と異なるニーズや考え方を
持つステークホルダーとの関わりが必要となるため、ステークホルダー・
エンゲージメントはより重要となるだろう。

「リスクマネジメント」については、自社のバリューチェーンがステーク
ホルダーに与える影響を網羅的に把握し、大きな影響を与えると想定され
るステークホルダーを中心に双方向コミュニケーションをしっかり行う
ことが重要である。

一方で、より戦略性が求められるのが、「イノベーション」や「バリュー
チェーンや競争基盤強化」のためのステークホルダー・エンゲージメント
である。これらは、企業価値を直接向上させる活動であり、“攻めのステー
クホルダー・エンゲージメント”と呼んでも良いだろう。

【イノベーション創出のために】
「イノベーション」を目的としたステークホルダー・エンゲージメント
には、大きく2種類ある。「変化の洞察」と「新たな気づき、知識の獲得」
である。

「変化の洞察」とは、世の中の変化をステークホルダーとのコミュニケ
ーションを通じて理解することだ。

GEのジェフ・イメルトは、2003年頃に、全事業をレビューしている中で、
「環境」が共通課題となっているのではないかという仮説を持った。そこで、
他企業、顧客、政府、NGOなどと広くエンゲージメントを行った結果、
「環境」への対応が新たなメガトレンドであるということを確信し、他社
に先んじて「エコマジネーション」として、環境ビジネスに本格参入した。

このように、ステークホルダー・エンゲージメントを通じて、社会の変化
を深く理解することができ、自信を持って新たな戦略方向性を打ち出す
ことが出来る。

「新たな気づき、知識の獲得」については、エーザイの例を挙げたい。

エーザイは、「本会社は、患者様とその家族の喜怒哀楽を第一義に考え、
そのベネフィット向上に貢献する。」「本会社の使命は、患者様満足の増大
であり、その結果として売上、利益がもたらされ、この使命と結果の順序
を重要と考える」と企業理念に掲げ、「業務時間の1%を患者様とともに過す」
という方針のもと、病院や老人ホームを社員が訪ね、患者や入居者の生活
支援を実施している。エーザイでは、こうした活動をhhc(ヒューマン・
ヘルスケア)活動と呼び、全社をあげてすべての組織で実施している。

こうした患者などのステークホルダーとのエンゲージメントを通じ、
固形物を飲み込めないアルツハイマー患者がゼリー状のお菓子を口にする
光景にヒントを得て開発したゼリータイプのアルツハイマー薬など、様々
なイノベーションが生まれている。

このようにステークホルダー・エンゲージメントを通じた「新たな気づき、
知識の獲得」は、途上国における“リバース・イノベーション”、外部との
協働による“オープン・イノベーション”などの形でも行われており、
最近大いに注目されている。

【バリューチェーンや競争基盤の強化のために】
バリューチェーンや競争基盤強化については、詳細は、下記のCSV
(Creating Shared Value)に関するオピニオンペーパーまたはコラムを
ご参照頂きたいが、企業の競争力の源泉であるバリューチェーン、人材
や社会インフラなど、企業活動を支える競争基盤は、多様なステーク
ホルダーとの関わりの中に存在している。
http://www.cre-en.jp/library/opinion/pdf/110220.pdf
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110530/220295/

それゆえ、多くのステークホルダーとWIN-WIN関係を構築すること
により、バリューチェーンや競争基盤を強化し、企業の競争力および
長期的な企業価値を向上させることができる。

P&Gとウォルマートが協働して、包装や水の消費量を削減している例や、
ユニリーバなど途上国ビジネスで成功している企業が多くのNGOと協働
している例など、具体的な事例もいろいろあるが、このCSVは経営戦略
の新しい領域で、まだまだ発展の余地があり、ステークホルダー・エン
ゲージメントは、そのための重要なプラクティスである。

以上のように、ステークホルダー・エンゲージメントは、戦略的に行う
ことにより、長期的な企業価値の向上に結び付けることができる。冒頭
のドミニク・バートン氏が述べている長期資本主義に向け世界が動いて
いく中、成功する企業は、よりオープンで、より積極的にステークホル
ダー・エンゲージメントを行う企業である。ここは、日本企業が明らか
に海外企業に遅れをとっている領域でもあるので、我々としても、企業
とステークホルダーを繋げる役割を積極的に行っていきたいと考えている。

(クレアン 水上武彦)


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◇◆ 3. 新着Topics & News
◆◇   ~ サステナビリティ関連の動きからトピックスをご紹介 ~
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今回は5つのトピックスをご紹介します。

●欧州コカコーラと英スーパー大手のセインズベリーが2020年に向けた
中長期プランをきれいにまとめています。ユニリーバのサステナブル・
リビング・プラン同様、参考になるでしょう。
http://www.ccesustainabilityplan.com/_assets/downloads/
cce_crs_booklet.pdf
http://www.j-sainsbury.co.uk/media/373272/
sainsbury_s_20_by_20_sustainability_plan.pdf
●サステナビリティ2.0   最近、サステナビリティ2.0と称する、CSR/サステナビリティ・エンゲ ージメントにソーシャルメディアを活用する動きが進んでいます。以下の 記事では、IBMがThinkPlaceという社内のアイデア共有プラットフォーム で、アフリカの水やエネルギーの課題を解決するアイデアを出し合っている 事例などが紹介されています。 http://www.justmeans.com/blogs/Sustainability-2-0--Driving-
Sustainability-Engagement-through-Social-Media--Part-1-2-/1219.html
●パタゴニアがイーベイと協力して、不要な消費をしないようにとのキャン ペーンを実施しています。本業に影響する可能性がある中、サステナビ リティを進める動きとして注目されているようです。 http://www.sustainablelifemedia.com/news_and_views/articles/
patagonia-ebay-partner-reduce-consumption
http://www.sustainablelifemedia.com/news_and_views/oct2011/
patagonia-building-strong-brand-out-old-clothes?utm_source=
newsletter&utm_medium=brandsweekly&utm_campaign=october17
●BSRによるサステナビリティに関するアンケート結果。2011年のホット イシューは、「人権」と「水」とのことです。 http://www.bsr.org/reports/BSR_Globescan_State_of_Sustainable
_Business_Poll_2011_Report_Final.pdf
    ●欧州委員会が「2011-14年CSR戦略」を発表 EUのCSR分野におけるリーダーシップ強化を狙いとしている。 http://ec.europa.eu/enterprise/newsroom/cf/_getdocument.cfm?
doc_id=7010
(水上 武彦) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【 メール情報誌の名称: Sustainability マガジン 】 ※ 本メールは、持続可能な社会にむけた企業と市民社会の取り組みに関する   情報を、隔月を目安にお届けするメール情報誌です。 ※ メールマガジンの転送は歓迎です。複製・転載は事前にご相談下さい。 ※ このメール情報誌は、株式会社クレアン及び株式会社CSR経営研究所の   スタッフと名刺交換させていただいた方にも配信しております。この   メール情報誌がご不要の方は、お手数ですが下記のアドレスより配信の   解除をお願いいたします。 ▽ メールマガジンの配信解除   http://www.cre-en.jp/library/mm/ ▽ ご連絡先   sustainability(アットマーク)cre-en.jp 「(アットマーク)」は、「@」に置き換えてください ▽ 発行: 株式会社クレアン       東京都港区白金台3-19-6 白金台ビル5F (〒108-0071)       TEL. 03-5423-6920       HP . http://www.cre-en.jp/ Copyright(c)2011 Cre-en,Inc. & The CSR Institute,Inc. All Rights Reserved. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━