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Sustainabilityマガジン(vol.11)2012.9.13号

Sustainability マガジン vol.11 (2012.9.13号)
========================= http://www.cre-en.jp/


リーマンショック以降、グローバル化を一層加速させている日本企業が
増えていますが、インドや中国に進出する日本企業の事業所が、現地の
労働者や市民の抗議活動のターゲットになる事例が増えています。政治
的な要因も絡んでおり、解決は容易ではありませんが、人命が失われる
事件も発生しており、これまで以上にステークホルダーとの共存共栄に
向けた取り組みが求められています。

今回は、クレアンからのお知らせ3点とコラム1点をご紹介します。


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◇◆ 1. クレアンからのお知らせ
◆◇   
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●1 朝日地球環境フォーラム2012
    弊社の薗田が朝日新聞社主催の朝日地球環境フォーラム2012に
    登壇させていただく予定です。
 → http://www.asahi.com/eco/forum/


●2 The Japan Times ONLINE記事
   弊社の山口がRio+20に関連して同紙の取材を受けました。
 → http://www.japantimes.co.jp/text/fe20120722sh.html


●3 インテル社のサプライチェーンへの取り組み
    取材記事を掲載しました。
 → http://www.cre-en.jp/library/changing/detail_008/


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◇◆ 2. Sustainability Column
◆◇     ~「奇跡のりんご」と自然を生かすイノベーション ~
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先日青森で、絶対不可能と言われていた無農薬の「奇跡のりんご」を作って
いる木村秋則さんの話を聞いてきました。

木村さんは、その場では、現在の社会に対する懸念などを中心に話をされ、
奇跡のりんごをどのように創り上げたのかは具体的に話をされなかったので、
青森から帰ってきてから、木村さんについての著書を読みました。

無農薬のりんご作りという夢に取り付かれ、それを実現していく木村さんの
ストーリーは、非常に感動的です。りんごが何年も実らず、貧困にあえぐ中、
家族のことを思いあきらめようかと口にした木村さんに娘さんが「そんなの
嫌だ」というシーンや、9年ぶりに白い花をさかせたりんごの木を木村さん
夫婦が見つめるシーンなどは、涙なしでは読めません。

木村さんは、無農薬のりんご作りを始めて何年も、農薬を使わずに虫を駆除
することを考えていました。しかし、それを実現することができず、自殺し
ようと山に入りました。そこで、農薬をかけていないドングリの木が元気に
葉をつけているのを見つけ、気付いたのです。

「木は周りの自然に生かされている。それはりんごの木も同じだ。」「自分
は農薬の代わりに、虫や病気を殺してくれる物質を探していただけだ。堆肥
を施し、雑草を刈って、りんごの木を自然から切り離して栽培しようとして
いた。それでりんごの木を弱らせてしまっていたのだ。」

木村さんは、それからりんごの木が本来の力を発揮できるよう、雑草を刈る
ことをやめ、りんごの木の周りの生態系を取り戻すことにしました。そして
ついに「奇跡のりんご」を作り上げたのです。木村さんの作るりんごは生命
力に溢れ、信じられないくらい美味しいそうです。

私は、木村さんの話を読みながら、以前マット・リドレー氏が著書「繁栄」
の中で、有機農業を効率が悪く、世界の増加する人口を養うための効率性
向上に逆行するものだと批判していたことを思い出しました。しかし、木村
さんは、りんごと並行して行っていた米の有機栽培で、農薬や肥料を使った
水田と遜色のない収穫量を実現しています。有機農業でも効率良く農産物を
生産することは可能なのです。

マット・リドレー氏は、自然エネルギーについても、莫大な土地を必要とする
もので、化石燃料を代替するのは現実的ではないとしています。

人類は、自然をコントロールすることにより、効率性を実現してきました。
しかし、気候変動や生物多様性などの問題が顕在化する中、より自然を生か
したイノベーションが求められるようになっています。一方で、自然エネル
ギーなどについては、効率性の観点からそれをネガティブに捉える向きもあ
ります。

自然をコントロール⇔自然を生かす、高効率⇔低効率という4象限を描いた
場合、人類は、自然をコントロール×高効率の象限を目指してきました。
今後は、自然を生かす×高効率を目指すことが理想ですが、自然を生かす
イノベーションが未発達の中、一旦、自然を生かす×低効率の象限を経由
する必要があります。

そこで、一旦、低効率となることをうまく受け入れられるかどうかが、人類
の未来にとって極めて重要です。「自然を生かす×高効率」が実現可能である
ことを信じて、将来のあるべき姿を見つめて、協力していくことが必要です。
木村さんの家族がそうであったように。


(参考)
「奇跡のりんご」石川拓治著(幻冬舎、2008年)
「繁栄」マット・リドレー著(早川書房、2010年)

(水上 武彦)


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◇◆ 3. 新着Topics & News
◆◇   ~ サステナビリティ関連の動きからトピックスをご紹介 ~
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今回は10のトピックスをご紹介します。


●1 「人権レポーティング」(greenbiz)
   人権報告を行なう際の5つのポイントが紹介されています。

   ①人権にどのように対応するのか、戦略を明示する
   ②人権に取り組むことによるプラスの影響をビジネスとリンクさせる
   ③利害関係者の見解も含める
   ④課題への認識を示す(人権問題は複雑で解決困難であるという前提の
    もと、解決に向けてオープンな議論を促進する)
   ⑤定性的報告と定量的報告のバランスを取る

  :http://www.greenbiz.com/blog/2012/07/06/5-tips-corporations-human-rights-reporting


●2 「サステナビリティに向けた株主行動」(greenbiz)
  合計資産が1.5兆ドルを超える数百もの機関投資家が、過去数年の間に
  2000を超える決議を提出、気候変動リスク開示や社員の労働組合加入
  を認めさせるなど、多くの影響力を行使していることが報告されてい
  ます。決議には、以下のようなものが含まれていたとのことです。

  ・持続可能性に関する課題の詳細報告書の発行 (Dell)
  ・サプライチェーンにおける劣悪な人権や労働問題への対応 (Gap)
  ・気候変動リスクのより詳細な開示 (Shevron)
  ・持続可能な林業慣行の採用 (HomeDepot)
  ・持続可能な水産物慣行の採用 (Costco)
  ・性的志向で社員を差別しないことへの誓約 (Cracker Barrel)
  ・従業員の労働組合加入許可 (Marriott)
  ・取締役会の多様性促進 (Netfilix)

  :http://www.greenbiz.com/blog/2012/07/23/sri-shareholders-dialogue-resolutions?page=0%2C2


●3 「世界投資報告書2012」(_UNCTAD)
  世界貿易開発会議の2012年度報告書が発行されました。2002年の同報告書
  では“sustainable”という単語はわずか8回しか登場しなかったのに対し、
  昨年の報告書で62回、今年の報告書では274回と、国際的な投資政策の分野
  で持続可能性への視点が急速に重視され始めており、サプライチェーンに
  おけるサプライヤー行動規範等への取り組みや国が持続可能な投資戦略を
  策定するための原則やフレームワークなどを紹介しています。
 
  :http://www.unctad-docs.org/files/UNCTAD-WIR2012-Full-en.pdf
   http://www.justmeans.com/A-New-Generation-of-Sustainable-Investment-Trade-Development/54869.html


●4 米国 金融規制改革法の紛争鉱物使用の開示規則が採択(SEC)
  難航していた開示規則がようやく採択されました。開示義務を負う企業
  は国際的に認められたデューディリジェンスフレームワークによる調査
  を行い、米国証券取引委員会への紛争鉱物報告書の提出が義務付けられ
  ます。JOGMECからわかりやすい速報が公開されています。
  :http://www.sec.gov/news/press/2012/2012-163.htm
   http://mric.jogmec.go.jp/public/current/12_54.html


●5「持続可能な消費と生産(SCP)政策に関する国際的展望」(UNEP) 
  UNEPが同報告書を発行しました。これからの持続可能な生産と消費
  を進める上で参考になる情報が取り上げられており、日本では福井県
  池田町の“有機の里”づくりの紹介なども行なわれています。
  :http://www.unep.fr/scp/go/publications.htm


●6 「持続可能な発展に向けた包括的豊かさ指標」(UNEP)
  国連環境計画が、Rio+20に合せて「the Inclusive Wealth Index (IWI)」
  を用いた主要20カ国の“包括的な豊かさ”の変化(1990~2008年)を
  評価・報告しています。これによるとGDPが増加した国でも、自然資本
  の劣化が激しかった国ではIWIの増加はわずかに留まり、富の創出や持続
  可能な発展を図る上で、IWIのような包括的な視点を持つことの重要性が
  強調されています。

  :http://www.unep.org/newscentre/Default.aspx?DocumentID=2688&ArticleID=9174&l=en


●7 「2015年以降の開発アジェンダを検討するハイレベルパネル」(国連)
  ミレニアム開発目標(MDGs)の次の国際的開発アジェンダとなるSDGs
  (持続可能な開発目標)の議論を行なう国連のハイレベルパネルの委員
  が国連事務総長により指名されました。日本からは菅直人前首相、米国
  からは大統領首席補佐官を務めたジョン・ボゼスタ氏が選ばれています。
  :http://www.unep.org/newscentre/Default.aspx?DocumentID=2692&ArticleID=9243&l=en


●8 「持続可能な保険原則」発表(PSI、UNEP-fi)
  責任投資原則(PRI)の保険業版となる「持続可能な保険原則」が
  Rio+20の開催に合せて発表されました。
  :http://www.unepfi.org/psi/


●9 「東京証券取引所のESGテーマ銘柄」(東京証券取引所)
  東証が特定のテーマに基づいて銘柄を選定し、公表する取り組みを
  始めており、第1回のテーマとして「ESG」によるテーマ銘柄が公表
  されました。日本の証券取引所は、欧州等に比べて持続可能性への
  取り組みがたいへん遅れているため、証券取引所の社会的責任として
  積極的な取り組みが期待されるところです。

  :http://www.tse.or.jp/news/31/120711_a.html


●10 「持続可能な地域づくり」
  持続可能な地域づくりに向けて、以下のようなガイドライン等が
  相次いで発表されています。東北復興における取り組みのように
  ローカルレベルでの持続可能性への取り組みの積み重ねが、地域
  や国レベルのサステナビリティ実現への鍵かもしれません。

  ・「地域循環圏形成推進ガイドライン」(環境省)
  : http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=15533
  ・「サステナブル都市開発アセスガイドライン」(環境省)
  : http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=15233
  ・「車に頼り過ぎない社会づくりアクションプラン」(福井県)
  : http://www.pref.fukui.lg.jp/doc/sokou/carsave/actionplan.html


(荒木 茂善、水上 武彦)


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